仕度/笠原 ちひろ
く
ひと巻きごとに
くん、と締める
枕で形を調えて
お太鼓つくるその途中
昨晩用意していたものは
なんだか今日にはそぐわぬようで
帯をだらりにしたままで
帯揚げ帯〆
いちから選ぶ
絞りの飛び柄か
無地の暈(ぼか)しか
季節の柄の友禅染めか
臙脂(えんじ)は派手か
鳩羽(はとば)は地味か
クリイムいろならおさまるか
箱からとりだしとっかえひっかえ
帯にあてがえば
そのたびに
華やいだり
粋になったりと
がらりと変わる
その妙の
やっと納得いく調和
帯揚げをふわりと絡める
太鼓の大きさを決め
帯〆をきゅうと締める
前うしろ
すがたを検分して
身支度はととのった
畳にすすめる足袋の音
さりさり耳にここちよく
ちろちろ八掛(はっかけ)の色こぼれ
襖に手をかけたところで
もういちど鏡をふりかえり
にいと笑って
出かける
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