あまのじゃく/中原 那由多
平坦な道をとぼとぼ歩いていくことが
いつしか当たり前になっていて
地図にない道を通ろうとすることを
鼻で笑うことが多くなった
冗談を言うつもりはさらさらない
仮にそうであったとしても
理屈っぽさしか残らない
湯船の月をかき混ぜて
おこぼれをもらいたかった
欲しがるたびに遠ざかり
もういいです、と飽きたにも関わらず
再度飛びかかろうとしたことは
曖昧さを誤魔化すことさえ出来なくて
不意にひがみたくなる
ショーケースの中の指輪を眺めるばかりで
結局誰かに先越されてしまった
……あれから二年
足りないものを補おうとしないままに
とうとう鍵をしまった場所を思い出せなくなっていた
分からず屋の独りよがりは
決まって芝居がかった日常会話に始まり
体育座りに終わってゆく
萎れた苗に水をやりたかったが
蛇口はただ頑なに黙秘を続けるばかりであった
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