虚構/小林螢太
 

騒々しい気分が通り過ぎると
傷ついた指の先から
歪んだ世界が消えていく

指差すのは、白いカラス
声をあげると
飛び去って消えてしまう

いつまでも指差すだけで
捕まえることはできない


曇る視界をなぞり
指先を露で濡らしていく
 
窓の水滴を
手で払いのけても
自分の顔ですら映ることはない


目を瞑れば
懐かしい景色に出会った

(遠い記憶の現実/幻想、又その混濁)
その景色に沈む、耽る


白と黒の帯が見える

瞼を刺すのは、
目まぐるしい程のストライプ

そして
視界一面の泡、
また、泡
ある筈もないエラが震えている


伸ばし過ぎた爪が割れて
噛んで吐き出す
 
その爪で削いだものは、
何だったのだろうか
 
今も
思い出せない




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