父/朧月
 
私は
父に愛されなかったから恨んでいるのだろうか
愛されたかった
抱きしめられた記憶が欲しい

私は
私をつくった人としての父しか知らない
古ぼけた風景の中の父は
ただ 命令をしている父

上機嫌の父は私のことで笑っていない
あの日から私は 釣りがきらいになった
新車がなんぼのものだと思うようになった

私よりも価値のある     父にとって
それらに勝ちたいと願った



それらに勝つことのなかった私に  
今は 父はいない
そばにいない

父は
戸籍上だけのつながりになった
紙の上の父

私は 
父に愛されたかったのだろうか
抱きしめられたかった
ただ 愛が欲しかった


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