孤独にて/智鶴
虚ろな限界の夢の端で
暖かい幻を見つけた
曖昧な明滅も、甘苦しい溜息も
嘘のように、貴女が狂わせていた
古い夜に、温い雨が降り続く夏の肌
幻よりも歪な、ほろ苦い香りに惑わされていく
怖い夢を、幻を見ていた
生まれてから今まで、ずっと
悲しみも切なさも痛みも何もない
美しすぎる世界に生きてきた
満たされない共鳴の中で
私はただ阿呆みたいな顔をして
潮風に晒されて色褪せていくだけの体で
死ねずに立ち竦んでいる
何処からが現実なんだろう
何処まで行けば目覚められるんだろう
遠くで貴女が笑っているのは
冷たい雨の幻聴だろうか
四拍子に包まれた世界で
そんな幻聴はせめてもの救いだけれど
伸ばした痩せた腕が何かに触れて
あれは気のせいだろうか
誰かが私を待っている気がした
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