花つばめ/Shaka
 
杖の暮らしは不自由で、
物をかっぱらうには向いてない
稼げなくなったと寂しげな顔をして
少し恵んでくれと云う
案内人は駄目だと首を横に振る

今、助けても
明日には仰向けになり、あの青く澄んだ天井を眺めるだけだからと
厳しい目で僕を制した

キリが無いんだよ
何十人、何百人助けても
この国では跡を絶たないと
悲しい目をして云う。

マイナス20℃の冬が広げた厚い氷の上、

オモニは、
ある寒い冬の夜に豆満江を渡って
中国へ行ったきり帰って来ない

アボジはいない
僕は知らない
何も知らない

アボジの顔も
自分がいつ、何処で生まれたかもしらない

ただ…、
オモニが待っていなさいと言ったから、僕は独りぼっちになっても待っているのさと、
彼は笑ってみせた

また何時かの冬の
豆満江が凍った夜にオモニが
きっと帰って来るんだと
彼は信じてる

きっと帰って来るんだと、
彼は強く信じてる。


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