貝夢想/佐野権太
 
回転を少し止めた朝は
おだやかな
エメラルドの生地で

ひとつの心臓もない
白い砂床に
波のつぶやきを聴く

貝の肉のような
とりとめのない柔らかさに憧れ
ギリギリと角質の擦れ合う
悲鳴を黙殺している

匂いのないレンズに
集められたスペクトル
それを未来と呼ぶなら
巨大な渦の中心にしたがい
冷たい熱を吐こう

口腔から立ち昇る蒸気は
透きとおってゆくあたりで
ようやく
赦されるのかもしれない
 
 
 
 
 



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