無題遮光の夜/瓜田タカヤ
 
夢想する私のニコチン臭い血の味がしなかったか
背中の痛みや体内のコイルの痒みや風景と自己との
不確定性やたまに皮膚を巡る女の温もりややらで
定型を僅かに保てているのに小さな興奮が混濁する

障害者用トイレで女優が自慰行為をしている光景には
絶えずカラスがヒステリックになく音が張り付き
午前中の人気のない公園のトイレを徘徊すれば
いつか女優と出会えるのじゃないかと考え
そのために必要な資金をギャンブルで使い果たし
地面を踏む

眼球外がすべて灰汁にまみれた未開
遮光遮光遮光の空間
人差し指の先さえもすべてから戒離している

笑顔で落ちていく
きちがいの幸福に笑顔で
遮光の夜を過ごす小さなぬくもりの震え

大掛かりな裁ち鋏遮光
遮光遮光の夜

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