思春期/しめじ
ペンネが路上に転がっている
曇天の下無数の人差し指がペンネをいじくっている
塗炭ばりの工場の前で独楽を回す少年
しまい忘れた風鈴が金平糖のような音を立てている
少年は緑色の独楽を得意げに空中に投げた
誰に見せるでもなく独楽を投げては左手の上で回している
新緑の快さに似た独楽の回転を
少年はとても好いていた
カラスが西へ飛び立ったので
少年は駅へと向かった
回虫の腹のような移動する箱の中で
乗客はみな脚立を持って立っている
味わい深い料紙を眺めるように
乗客はみな脚立を持って眺めている
誰一人言葉を交わすことなく
誰一人視線を交わすことなく
乗客はみな脚立に熱中し
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)