黄昏に告ぐ/みつべえ
 
 よしんば私の思想がデタラメであるにせよ、私が語ることによってのみ、私は私のようになる。私の語りがどんなに奇妙でも、語りつづけることだけが、いっけん成長しているかのように見える時間的経過となってあらわれるのだ。私の言っていることがわかるだろうか、偽善の読者よ(と誰かが言った)。私があなた方に仕かけたトリックは、私自身の不在である(と言った場所にもすでに私はいない)。
 私の言葉がまだ濡れているうちに、すばやく触れてくれ。あるいは触れようと私をさがしてくれ。その眼差しの奥の悪意に感応して、私は実体化するだろう。つまりひとつの場面としてだが。
 私は私の破片を生きる者。私という生の全体に向かって失
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