砂の城/水島芳野
ただ微笑むしかない僕に、あなたは何故謝るんだろう。
裸の足を水に浸けたまま、
膿んでゆく傷口を、冷めた目でただ見ていた。
あなたは何故、愛などと呼ぶのだろう。
信じるべきものなど何もないさ
正しさの物差しがどこにも存在しないのなら
正義のヒーローになど、なろうとしなくていい。
そうこうしてるあいだに、
世界中の涙が集まって
僕を溺れさせてしまうだろう
耳鳴りがするよ。
一体何が間違いだった?
強くあろうとすればするほど、見えない警告は強く鳴り響く
誰も間違いなどではなかった
そうだろう?
所詮すべてはタイミングだったろう
凍えてゆく意識の中で
それだけは信じてみたかった。
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