が歯車で/井岡護
では歩いたら歩くという歩みですか
と
小さな書記の牛みたいな甲羅が喋る
否定と対象でないは
何時までも手を差し出さない
額縁の塔の前で立ち尽くしたままで
傘の曲がり具合
温度と時間の関係
まるで紙幣と鋸の関係
そこに人がいるように動く兎の筋肉
そのとき
意味の大きな河原の脚部にぶつかる
悲愴感の片割れが手足を泡立て
叫ぶ
明日には着くと
藤の群れの足並みはお構い無しにそれらを
紐や蛇の球体に猛禽がお辞儀をするように
黒い合皮の彼女は手に蓋を縫い付け
解き解し解す
椅子には座らず
戻る 編 削 Point(1)