あたたかい飲み物/
瀬崎 虎彦
肺病病みの男と
肺病病みの女が
みすぼらしい格好で
冬の道の真ん中にいる
男は希望に絶望し
女は絶望に希望し
ふたりはディーゼルエンジンの
煤で汚れた街路樹の陰に入る
何もほしいものは無い ただ
誰かが僕たちの貧しさを
哀れんでくれるのなら
湯気を立てて抽出される
琥珀色の紅茶を一杯
ご馳走してくれないか
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