このちっぽけな町を出てゆくのだ/
瀬崎 虎彦
恋人よ 悲しい冬の朝のにおいを
結び合わせて僕たちは
僕たちを手ひどく扱った
このちっぽけな町を出てゆくのだ
機械油のにおいだとか
缶詰工場の工員のつなぎだとか
狭い路地や貧乏そうな子供たちに
永遠に別れを告げるのだ
恋人よ 生きてゆけるかどうか
その不安は明日に預けよう
恋人よ 幸せなのかどうか
その問いは未来に預けよう
恋人よ 逃げるように背中を丸めて
このちっぽけな町を出てゆくのだ
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