愚直とは私のためにある言葉だ/瀬崎 虎彦
 
疾駆する 髪を風になびかせて
星の無い夜 月の無い夜道を
呼吸する音が 耳元でうるさい
冷たい空気と体温の熱さ

帰らねばならぬ 刻限までに
守らねばならぬ 交わした約束を
目にものを 耳に音を
世界に誠実の一撃で穴を穿つのだ

私は卑怯者だった
私は惰弱だった
私は諦めそうになった

私は軽薄だった
私は考えなしだった
愚直とは私のためにある言葉だ
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