こうして少しずつ滅びるのだろう(秋)/木屋 亞万
闇とともに冷え込む山林の
葉はかじかんで赤く染まる
熱を絞りだすように色づいて
焼け焦げたように枯れていく
臍の緒のように乾いた赤ん坊の手の平が
茎の上を這う苔の上に散らばっている
唐紅の葉群れの中で黄金色の紅葉が一本
きめ細かな黄緑の苔からすっくと立っている
柱と軒と床に切り取られた長方形の中に
浮かび上がる秋の庭
トルコ石のような池の中では
大きな鯉が身体を休めている
遠くに見える山々の褪せた紅葉のさまも
冬支度の半纏を着ているようだ
人が大挙して押し寄せる時刻を過ぎて
働くものだけが残されたときの池の静寂
本来はこうあるべきなのかもしれない
山野は沈
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