日々の陰影/蠍星
真昼間
マフラーのたなびく
風のにおい
とおり過ぎる一日は
いまだ生温い
魚ノ目が痛んで
歩くのも
生きるのも
億劫なこのごろは
ドアを開けることさえ馬鹿らしい
というのに
あなたに会いにゆく
たいがいわたくし
病気のようで
あなたは今日もおんなじ
話ばかりをしていて
気づかないのだろうけど
あなたの額が近づくとき
網膜はあなたに満たされている
あなたのシャツの色
だけ
忘れられない
ほほの熱も冷めるころ
電気を消して
カーテンを閉めきって
ベッドの上で
釈然としない日々の
陰影を
現像しているうちに
どうにもかなしくなるのだけれど
あなたの名前を
呼べない
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