メインの隠し味/智哉
もしもちゃぶ台返しができたなら
私はその場でその必殺技を繰り出したことだろう
それ程にそのカレーは不味かった
しかしながらその煮込み料理は
今時に似合わず親切なご近所さんからの頂き物
無下にもできずゴミにもできず
玉葱が入っているために犬の食事にもできなかった
ここで断っておく必要があるのは
私が無類のカレー好きだということだ
夕食カレー
朝食カレーパン
昼食カレーうどん
夕食カレードリア
そんな24時間を喜んで選べる
自分で作るとなれば
みりんをはじめとする様々な隠し味を練り込み
納得ゆくまで煮込み続ける
そんなカレー大好き人間だ
それだけに、今夜のカレーのショックは甚大
やり場のない思いをどうしようかと考え
詩にカレーごとぶち込んでしまうことにした
そうすればどうにか処理できるかもしれない
私にはとても食べられなかった煮込み料理
隠し味にもならない程、隠したつもりだった
隠し味として隠したつもりのスパイス
見破られた時に初めて
私の血となり流れた気がした
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