雪/
瀬崎 虎彦
くるしいと口にするとき
「くる」という音の流れがキレイ
やわらかい弧を描いて
昨日あなたが吸った舌が舞う
コスモス咲き乱れる公園を
ふたりで歩いた午後のように
夜を上っていく長い長いエスカレーター
沈黙は愛しいひとのための音楽
この苦しさもあなたがくれたものなのだ
コールタールが堆積する
白い原野に汚れきった心を広げ
雪の中でひとりきりのランチ
愛しい人の名を呼ぶときに
ため息が結晶となり降りゆく
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