位置/Kazu.
今 わたしには見たいものがある
窓ガラスの向こうの木立の先
に流れる稜線のはて遥かに広がる空
の上に揺らぐ大気圏突き抜け
さまよう宇宙へ
(願望ではない意志の)
視線を凝らしているのだ
が
光年の闇を塞ぐ大気圏
の手前にたちはだかる空
をさえぎる稜線を垣間見せる
木立を映す窓
を背に
裸身のあなたが立っている
今 わたしには聞きたいものがある
藺草の香りほのかに残る畳の下の
無骨な岩肌染み通り地下水湛える
白亜紀ジュラ紀のもっと下で
くぐもるマグマの沸々と滾(たぎ)る
(ちからではない いのちの)
音に耳を傾けているのだ
が
早い里の秋は
虫の音鳥の声のほかには
あなたの息づかいしか聞こえてこない
わたしたちいままで
多くのものを見多くのものを聞いてきたが
見るべきものを見ず聞くべきものを聞かないで
きてしまったような気がする
あまつさえ
わたしたちに本当に必要だったのは
(宇宙でもマグマでもなく)
あなたとわたしの間の位置を測るもの
ではなかったか
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