沼/朧月
夢をみた
ふかいいふかい沼にはまりこみ身動きもとれず
出せる声は呻くような無様な音のみで
がいこ がいこと鳴くイキモノが迫っては消える
暗いとも明るいとも言えぬ景色は
これがこの世界の果てかと思わせる
死に損なった老人の瞳の中のようで
かえりたいよう と つぶやく植物の群れは
上にむかい 下にむかい その手を伸ばす
希望はどこへいった
はるか昔確かに植えた希望の実は
今だ水面からあらはれてはこず少女の首筋へ
むごたらしい痣を彩ってゆく消してゆく
どこ へ ゆけばいい
迷うあなたは
照りつける太陽を背中に背負い
この私の闇を欲しがって泣く
どろり
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