蝌蚪/小川 葉
後なのか
忘れてしまったけれど
今の僕には手足があって
いつからそうなのかは
知らないけれど
フナにならなかったことだけは
事実のようであった
生き物になっていた
僕はいつだって
その頃を思い出しては
蛙の鳴き声なども
上手に真似ることができた
釣りに連れてってくれた
父も蛙の鳴き声が上手だった
帰るところは
いつもそこにあった
もしフナに生まれていたら
手も足も出ないまま
魚になっていたのかもしれないと
胸鰭のあたりを動かして
父と二人して笑った
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