瞳にうつしこむように 今夜/瀬崎 虎彦
心奪うように風が
砂の数を数えていった
言い訳もなく僕らはいつも
同じ場所に立ち尽くして泣いた
声が途切れるように聞こえた
そこにいるのに触れられぬような
距離をも無意味にするこころの
閉ざされた扉の重さを知る
悲しみの湖の上で そう
花の香りに抱かれるままに
どうしようもない
とりとめもない
こころが君だけを探してる
そのこころを解く鍵を
結び目を立つ強い剣を
求めあぐねていまさらに僕は
同じ窓辺に月を見上げてる
ありふれた言葉のへりを
すべりゆく君の白い指を
見つめるように
射止めるように
深く瞳にうつしこむように 今夜
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