針葉樹の森で/朧月
その腕を伸ばし光を遮り
覆い茂る葉の濃い緑は
生きている証 生の強さ
ぽとり
先からこぼれ落ちる雫で
小さき命を救いながら
静かに立っている様は壮大な命
私に目もくれず
拒まず
もたれかかる重みなど感じはしないで
そよそよと
風に揺れる緑
わけておくれ
少しのその力 と
そっとからみつける私のうでに
懐かしい匂いが
ああ
このまま一体となりて
根元に溶け込んでしまいたいと
何度願ってみても
冷たい風が頬をなぜる頃
帰りなさいと
いわんばかりに枝を鳴らし
ざざあと かぶりをふる
針葉樹の森で
私は また 生まれ変わり
元の世界へかえる
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