自覚/Kazu.
ぼくはにんげんだから
月に一度はさかなににって
屈折する水の中から世間を眺めてみたい
ぼくはにんげんだから
月に一度はいぬになって
気にくわぬ奴らを噛み付いてまわりたい
ぼくはにんげんのおとこだから
月に一度はにんげんのおんなになって
おとことしてのぼく自身に惚れてみたい
でも
ぼくはさかなじゃないから
水の中では棲息できない
無論 切り身たたき塩漬け
にされる心配のないかわりに
商品ではないぼくはにんげんなのだ
ぼくはいぬではないから
健気に主に尻尾を振る必要がない
無論 これが妻のものか昨夜の女友達のものか
匂いだけではハンカチを嗅ぎわけられないかわりに
本能ではないぼくは理性なのだ
さかなやいぬにはだめだけど
にんげんのおんなになんげんの子供を生ませられる
ぼくはおとこのにんげんなのだ
やがてはごせんぞさまになるぼく
ごせんぞさまにしてみれば
輝かしい未来!
のはずだった
このいまのげんじつのぼく
生きています
たぶんあしたも
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