フローラル/瀬崎 虎彦
甘いミルクのような霧が晴れたら
どこまでも緑のじゅうたんが広がっている
空は晴れていたのになぜあれほどの霧が立ち
僕はあなたを見失ったと錯覚していたのか
光が差すと霧はシフォンのドレスのように
ゆるやかな残像を残して舞台から消える
音は聞こえなかった 温度も感じなかった
目に見えるものだけしか僕には分からなかった
手を振って あんなにも手を振って
最後の別れを告げていたのだと思う
フローラル フローラル フローラル
風に高く舞い上げられて
花びらの柱が天を目指す
愛している 愛してない
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