抽象画/千月 話子
絹の目に風が通るような
さらさら と暖かい日差しが
空から降って来る度に
少しずつ体が 溶けていくようです
束ねた髪を解いて 窓辺で
流れる光と花の香り
白い手をかざして 空
高く高く掴んでも
もう あまり怖くありません
遠く旅したあの時間は 懐かしいデジャヴ
優しさに涙溢れる細い路地
奥まった公園の緑と土の匂い
少し高台のそこは 木陰に隠れて
柔らかな息をしているようです
見上げれば「おかえりなさい」と
揺れる木々の間に 青い空
眠るように目を閉じて
透ける微風を感じています
小さな階段を下りれば あの頃の体に
纏わり付くように持って帰っ
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