世界は一瞬にして凍ることがある/殿岡秀秋
 
わからない

岩の隙間で氷が膨れて
割れ目が拡がるように
ぼくの胸の襞は凍りつき
母の顔の雪解けで
溶けていく間に
細かく裂ける

いつも怒っている
阿修羅の顔は
凪いだ波のように
ぼくの気持ちを穏やかにする

人の表情が変わるだけで
ぼくをとりまく世界まで
凍ることがある
母がいなくなった空の下でも

扉をあける向こう側では
昨日と違う表情が
群れているかもしれない
という妄想によって
ぼくは病者である

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