影踏み/Kazu.
 
子供等が
影踏み遊びに興じている
こんな遊び
いまでもするのだというかすかな驚き
無心に ときに真剣になって
人間をではなくて
影を踏む
という行為
(大人は心の中にまでも踏み込んでくるから)

踏まれまいとして
鬼より遠く逃げていく
でも夕日に向かって駆け出してしまうので
すぐにペタッとやられてしまう
あの要領の悪さは
子供のころのぼくだ
そのくやしさが忘れられず

真暗な中で
影を捜して泣いている
夢をみた

 おかあさん いまでもぼくは
 踏絵のように
 人の影を踏めないでいる

明け方
やさしい掌が闇の帳(とばり)を梳(くしけず)れば
朝日は虹の形で昇ってくる
さあ 今日一日
自分の影だけは踏まないように
爪先立って出勤する

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