dead/佐藤真夏
第一夜
手の平に十匹乗るくらいの小型犬がちょうど手の平一杯分居て、駐車場に止めてある私の赤い自転車のハンドルにぶらさがっているスーパーの袋の中で溺れて死んだ。その日は大雨で、暑かった。残暑のむさ苦しい風が袋ごと犬たちを反回転させて、よろめいた自転車は隣のママチャリにもたれようとしたけれど、一列になった自転車はドミノになってずっと遠くまでバタバタと倒れていった。
第二夜
ビー玉の敷き詰められた海岸には、脳がはんぶん蛇になった子どもたちが集まっていた。蛇は地球儀を舌でなぞって旅先で毒をばらまくから、子どもが舌を出して笑うとき、津波で空は遠くなる。私は海岸の真ん中にある赤いブランコに乗り、一瞬の隙を突いて津波の向こう、雲の平原に飛び込んだ。
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