『おだいじに』/東雲 李葉
 
気分がやけに良くて
胸のつかえが取れた心地だ
手足は冷たくともとても穏やかで
失った人のことももう全てどうでもいい
届かない彼のことは忘れよう
手を伸ばしてもかわされて冷たい雨
遠い目をしたあの人を抱き締めよう
向こうを見ないで あなたの目の前にいる
この存在に景を重ねないで

呼吸が足りなくて
苦しいようで少し哀しい
手足が冷たいのに穏やかなのは
寒々しくて笑えるほどもう全てが手遅れだから
届かない彼に会いたかった
言葉交わして蔑まれても温い傷
こちら見ないあの人の目を隠そう
もう大丈夫 何もいない何もしない
この存在に影はもう無い

気分がやけに良くて
胸がすっと軽くて
手足は冷たいけれど
とても穏やか
届かない彼は
もう諦めた
でも
彼を見ているあなたは
なぜか、まだ
戻る   Point(1)