『おだいじに』/東雲 李葉
気分がやけに良くて
胸のつかえが取れた心地だ
手足は冷たくともとても穏やかで
失った人のことももう全てどうでもいい
届かない彼のことは忘れよう
手を伸ばしてもかわされて冷たい雨
遠い目をしたあの人を抱き締めよう
向こうを見ないで あなたの目の前にいる
この存在に景を重ねないで
呼吸が足りなくて
苦しいようで少し哀しい
手足が冷たいのに穏やかなのは
寒々しくて笑えるほどもう全てが手遅れだから
届かない彼に会いたかった
言葉交わして蔑まれても温い傷
こちら見ないあの人の目を隠そう
もう大丈夫 何もいない何もしない
この存在に影はもう無い
気分がやけに良くて
胸がすっと軽くて
手足は冷たいけれど
とても穏やか
届かない彼は
もう諦めた
でも
彼を見ているあなたは
なぜか、まだ
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