満月/にゃんしー
と、話をした!
また赤信号に変わったけれど、ブレーキなんかしたくなかった。
いちだん強くペダルを踏むと、横断歩道を高速で突っ切った。
夕焼けの町に響くクラクションが、ファンファーレに聞こえた。
家の近くの公園で、古谷くんがつまんなそうに、
タバコをふかしていた。
「俺、セックスがしてー・・」
僕は言った。
「セックスが、したい!」
古谷くんが目をまあるくし、
その後タバコを落とし踏みにじると、
「声、でけえよ」といって軽く笑った。
「プレハブ小屋でビニ本拾ったからさ、今から読もうぜ」
古谷くんがそう言った。
うなずくと、古谷くんを自転車の後ろに乗せ、
坂の上にある古谷くんの家に向かった。
立ちこぎで力いっぱい踏みしめると、足がペダルからスリップしてこけた。
アスファルトの坂の途中、大の字になって空を見た。
勃起して盛り上がった学生服の向う、
妙に湿り気のある満月が昇ってきた。
初出:投稿詩 on PQs・3回戦
http://www.yuracom.com/ps/ps.html
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