満月/にゃんしー
 
セックスがまだ下手糞だったころの話をしようか。

学校帰りには毎日本屋に寄って
ゲーム週刊誌から現代小説まで立ち読みした。
田舎だったあの町には
本屋くらいしか暇を潰す場所がなかった。
町に一軒しか無い本屋に
同じ制服を着た学生が皆集まった。
皆同じようにお金が無かったので
いつも本を買うわけではなく立ち読みをしていた。

その本屋の店長は中村さん、と云った。
名札に「店長 中村」と書いてあったのでそれが分かった。
立ち読みする僕らを叱るわけでもなく
レジ横で長い髪をひとくくりにし
黒縁の眼鏡をすこし皺の出来始めた手で押し上げながら
新書サイズの小説を読んでいた。い
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