喉/Kazu.
 
喉の長さを意識するようになったのは
最近 言葉がやけに痞痞(つか)えるようになってきてからだ

喉といえば
喉越しのビールとか
ウソツイタラ針千本ノーマス
あるいは扁桃腺の痛みぐらいでしか
意識したことがなかったが
今 喉の喉としての存在を
喉ではない頭で考えてみる

昨日 議論したったあの一言も
ぼくの本当の真意が
ちかごろ特に長くなってしまったぼくの喉を通過する際に
あっちにぶつかりこっちに迷いして
ボロボロになってしまって
口をつくころには
思わぬことを口走った形跡がある

テレビでは季節はずれの鵜飼を放映している
鵜匠の巧みな紐捌きに操られて

だれかぼくのこの長くなってしまった喉に
一本の巧みな紐を引っ掛けて
あの鵜匠のように
詰まってしまった言葉を吐き出させてはくれないか
しこたま飲んだ薄暗いスナックで
「きみ かわいいね」
とまではいかなくても

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