不幸でなければいいと祈る/瀬崎 虎彦
僕はカーディガンのボタンを外してかけてやる
夜はだんだん透き通りいずれ朝になる
恋人は肺活量が人の半分くらいしかなくて
普段は困らないが肺炎になると死にそうになる
恋人が死んでも死にそうになっても
僕はとても困るのでそうなってほしくない
時計が一時を回った頃僕は仕事部屋を離れて
恋人の様子を見に行くのだけれど特に変わりない
さて言葉を移し変えておいた水槽の中で
僕はひとつふたつ変化を確認しながら
日誌をつけて魚たちの成長を記録する
月も見えない場所にいる僕と
そんな僕と一緒にいる君が
どうか不幸でなければいいと祈る
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