海水浴場/北村 守通
中に消えていった
猫は
海面という
天に召されて
海底という下界を見下ろしていた
しかし
それは空の途中であって
空であって
空ではなかった
本当の空は
私にも届かぬ
はるか彼方の頭上にあって
それもまた
やはり
空であって
空ではなかった
この後
たぶん
猫は海底という
新たな下界に戻り
その体を構成している
有機物たちは
輪廻転生していくはずであった
あるいは
浜の砂の上で
輪廻転生していくのかもしれなかった
質量は
保存され
失われることはなかったのである
戻る 編 削 Point(3)