海水浴場/北村 守通
猫が浮かんでいた
足跡は
浜辺には残っていなかった
腹が膨らんで
それでバランスを保っていた
その下に
エメラルドの群れが
見え隠れする
猫の首は
だらしなく折れ曲がり
海底を見下ろしていた
海面という
界面を介さずして
直接見下ろす
その不気味さを
思い出すと
脂汗がにじみ出てくる様だった
掌を
確かめてはみたが
幸い
湿ってはいなかった
エメラルドの群れは
時折入れ替わり
猫の陰から出て行った者たちは
より深い場所で待ち構えていた者達によって
界面へと追い込まれ
時折
界面から飛び出してはみたものの
海底の方向から拡がる波紋の中に
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