死んだ獣の赤い背を/鏡文字
 
マルスリーヌ マルスリーヌ 裸になりなさい
君の馬が駆けてゆく
そら 行ってしまえ!
麦穂が頭を垂れて
風の道を僕らに教えている
マルスリーヌ 君のお碗のような乳房を
緑の風にさらして
薄桃色の乳首を小さく尖らせた唇のように
凍らせて
死んだ女のようにそこに横たわれ
裏手の汚い百姓家のマルメロの陰が
死の影のように君を覆うのを
僕は窓から眺めていよう
狂わしいほどの勃起を下腹に感じながら
僕は君のことを死んだ鹿だと思おう
陽が傾いて 空が君の髪の色を真似る頃
君の馬が戻ってくる
本当は君のその赤く傷ついた背中が見たかったんだという事に
いつも気付く
窓に額を押し当てて 君を引き止めるんだ
マルスリーヌ
マァルスリィィヌと
蒼ざめた顔で まるで自分に向かって言うように
毎夕 何度も
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