消える夏/田園
 
ぎぎぎぎぎ
じじじじじ
りりりりり

蝉の歌う声が耳に侵食してくる
一向に止む気配等無く
全てはその音に支配される
反転した静寂

一滴汗が流れる
また一滴
とめどなく汗が流れる
私の体温も真夏のそれに
変温動物の様に
冷風と熱気が混じりあって一面が平坦になる様に

ああ私が居なくなる
水分がじわじわと蒸発していく
肉は細胞から溶けてゆく

彼は誰
もはや何も分からない
ただ緑と青の世界
私は透明になる

ははは
笑いが込み上げる
神は何と思われているか
きっと微笑んでおられよう
消える
消える

全てを巡る大気へ戻れ
大きな大きな声を聞いた

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