冬ごもり/乱太郎
 
 
コートを着たまま
(冬ごもりしていた)
見せかけの夏
蝉の鳴き声が死んでいた

都会の片隅で夏の亡霊と戯れるが
酔いどれの快楽だけが紅潮して
海辺を闊歩していた
煌めく夢が泳ぐことはなかった

コートを着たまま
(冬ごもりしていた)
見せかけの夏
僕の死体を見つけたか

干からびた指
血流のない静脈
伸縮しない水晶体
平凡な日常にこびりつき
ため息さえうな垂れて乾燥してしまっていた

コートを着たまま
(冬ごもりしていた)
見せかけの夏
地中に埋もれていく

置き去りにされて
火葬にされることもなく
僕の哭き声は
まもなく
鈴虫に食べられるだろう


晩夏が過ぎ
空が笑う

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