軽トラ家族/朧月
 
軽トラックの後ろから
眺めたあなたの姿が
あまりに女だったから
私はこわくなった
へだてたガラスを殴って
振り向かせたかったけど
バックミラーで私の顔を見られたくなかったから
寝転んだ

真っ暗な空にケモノが横切っていった
軽トラックは走る 夜の森を

チチオヤってなんだっけと
ふと考えてみる
生まれてからこの肌は
感じたことあっただろうかと

ハハオヤは確かにいたっけ
痛みをもって
知っていた
あのガラスの向こうの顔をもってたはず

両親ってつぶやいてみる
ざあっと
風がふいた

横揺れする軽トラックが
がたんと停まって

それぞれが降り立つ
女になった母と父になった男と
荷台に寝ていた娘の私が


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