創書日和「鞄」 こころのカタチ/逢坂桜
定時を3時間過ぎて、本日の業務終了。
ロッカーから鞄を取り出して肩にかけて、更衣室を後にした。
「ちょっと変わってるね。その鞄」
話しかけてきた彼と、一緒に飲み屋に行き、彼の部屋に行った。
それから2年が過ぎたころ。
私の鞄は、友人のハンドメイドだった。
趣味で鞄を作っていた友人は、ある日、ネットショップを立ち上げた。
記念すべきお客様第1号になったのだ。
後に、彼の言葉は、よくある手ではなく、本心からだと知った。
彼は、いまはもう時代遅れとなった黒いアタッシュケースを愛用していた。
父親から譲られた、と誇らしげに語った。
私の
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