冷凍食パンの行方/智哉
いつの夜かに冷凍した食パンの事を覚えてる
柔らかいままでは持て余す愛しい食パン
あたしが冷凍した張本人だから
忘れたことすら無いってことも覚えてる
忘れることができなくて
とうとう解凍もままならないうちに
焼いてしまうことにしたんだ
あの夜聞こえてきたラブソングじゃ
焼けるかどうか心配だったあたしも
腹をくくり、トースターのスイッチを押した
案の定うまくは焼けてくれず
半ナマで飛び出し逃げ出した
追い掛けなかったあたしは
18ヵ月ほど経ってから食パンを見つけた
それは何故か、もはや半ナマではなく
真っ黒に焦げていた
それはそれはもう真っ黒焦げで
それでも飽き足らずまだ自分から
トースターへと飛び込んでいた
真っ黒に焦げたパンの行き先は
もぅ生ごみ入れしかないのに
戻る 編 削 Point(1)