紀元前のぬくもり/みぞるる
光のぬくもりは
私の頬をななめに撫でて
ゆっくり後退していった
津山駅ゆきの
この乗り物は
私をぐらぐら揺らしながら
こっそり古代へ連れてゆく
あの頃は
ママに叱られそうだった音楽は
今は悦楽のはじまり
イヤホンの
調子が悪かった
日本の美術史を
知りたくて
おかしな文章を読む
「弥生時代
――余剰生産物が出現し
貧富の差が生まれた。
それは権力の誕生に
つながってゆく――」
光のぬくもりは
車内に閉じ込められながら
あるまじき速度で
ゆっくり
ゆっくり床を滑り
どこかへ行ってしまった…
寝る人
考える人
眺める人
じっと静かに見つめる人
私は
Jロックを聴きながら
紀元前へ
遡る人
光のぬくもりが
どこへ行くのか
知ることはないまま
戻る 編 削 Point(4)