モーツァルトを聴くことは/あらら
 
モーツァルトを聴くことは
あの日初めて二人で取った朝食のように
このキラキラした時間が
いつまでも続けば良いと思い願うこと

モーツァルトを聴くことは
あの花の香りがそうさせるのと同じように
そっくりまるごとが蘇ってくる
ある一つの思い出に囚われること

モーツァルトを聴くことは
目には見えないものにも
心を揺り動かすような
力強さがあると知ること

モーツァルトを聴くことは
触れることの出来ない
心の在りかを
痛みと共に感じるということ

モーツァルトを聴くことは
とてもじゃないけど僕には
彼と同じようにこの世界を聴きとることなど
出来やしないと思い知ること

モーツァルトを聴くことは
人の五感では分からない
何かの存在の確かさを
ただ感じとるということ

それはまるで
空の向こう側の出来事のように
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