願い/伊織
この空は
川だって越えてつながっている
そう思って安心していた
安心したまま
あの夜や言いかけた言葉などを
曖昧にして しまいこんでいたんだ
食事なら一緒に行くのに
くだらない話は散々するのに
メールだってたまにだけどするのに
逢いたい
テレパシーだけ川の向こう側に送っていた
たった一度発信ボタンを押せばいいのに
親指は切のボタンに行ってしまうんだ
好きです
の
本当の意味はとても重いから
絵文字にすらできずにいた
このままがいい
だって、もしもそれが
あるいは、あわよくば
もう
わかっているのに
このまま
を選んだら
何もおこらない
いつかのオープンカフェに食事に誘おう
パンナコッタのおいしかったお店
少しぎこちなくなるんだろうな
だけど 決めたから
願うための資格が
何かひとつあるとするのなら
それはきっと
自分の手で
叶えにいくこと
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