笑う電車の中で/虹村 凌
 
鞄はあまり好きじゃないんだ
手が塞がるのが苦しくて
リュックならいいんだけど
サラリーマンになったら鞄を持たなきゃいけないのかな
黒いスーツを来て
地味なネクタイをして

リーマンにはなりたくないって言って
全てのサラリーマンを否定してた友達が
気づけばサラリーマンになっていた
不味そうに煙草を吸いながら
煙草を止める話をしている
後はよくわかんない
聞いてなかったから

バイト先で話が弾まない
絵とか詩とか映画とか言っても
何か違うって言う目で見られて
ハリウッドとか言われて
俺もそれに合わせて作り笑うんだから
そりゃ話は弾まないだろうな
絵なんて誰にでも書けるし
詩なんて誰にでも書けるし
映画なんて誰にでも撮れるのにね

鞄が嫌いで
手ぶらで外に出ると
鞄は?って聞かれる
別にいらないじゃないかって思うけど
何も言わないで缶コーヒーを飲み込む
友達と会ってもバイト先でも
手ぶらでいる事が変みたいな雰囲気で
どうしようもなく眠くなる

確かに電車の中で手ぶらの奴って見ないな
そう思って笑う
電車の中で
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