言霊/乱太郎
 
妖言の使者顕われて
戯れる闇夜のひととき
濡れる息使いを殺し
桃源の森を散策する
    (ここには
     あなたとわたし
     しかいない
     わたしとあなた
     だけ)
桜の樹を背に当て
さざめく月を赤い唇で呷る貴女
眩い日照りでは
愛しい貞女
時には花模様の猫
人の気配など寄り付かぬこの場所で
白く妖艶な太腿を晒し
此の世のともあの世のものとも知れぬ唄を
言の葉を手毬の様にあやす貴女
    (あなたに
     見つめられて
     あなただけを
     見つめて)
狂おしい沈黙
獣の薄ら笑みが覗いている
[次のページ]
戻る 編 削 Point(9)