流れ星/三森 攣
 
神経逆巻く 暗い森の中
よどみなく青い海に隔絶された受精卵の中
静かな島が一つ

空は遠く碧く
砂浜の上には一匹の蛙

割れない壁に幾度も撃ち突け
痛んだ拳の鐘音が
森を駆け抜け ゼリーの層を震う度
蛙は赤く膨れ上がり 海をにらむ

最後の鐘が響く時
蛙は空気を解放する為 無熱の爆弾と化す
頭蓋を振わせ 血を沸き立たせ
怒声は波無き海に風を呼ぶだろう

それは先生を呼び起こす為の一連の儀式

目覚めた先生が私の両肩に手を添えてささやく



自然に。ごく自然に。
右にも左にも反れず ただただ的を点に中てて
力を抜いて。何よりも自然を。



懐かしい匂いに頭の奥が痺れ出し
懐かしい音楽が溢れ出す
全てを思い出せたなら 割れない壁の崩し方はわかるはず

蛙が再び眠りに落ちていく
先生は微笑んで ゆっくり消えていく


おやすみなさい先生 また会う日まで
私は先生に別れを告げて
心臓にまた一つ星を刻みつけて 目を閉じた

森の夜には星が降る

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