距離/アンテ
 
 こんな花畑だって
不自然にはちがいなくて

夜空の星を見上げるとき
立ち上がった方が近く感じるのは
なぜだろう
知らないふりをしている方が楽
だからかもしれない

アイスクリームのバーで
土をほじくり返してみる
思ったよりもやわらかくて
途中で彼女も参戦して
手で土をかき出すうち
固いものに行き着く
岩にしては平らすぎて
面積を広げていくうち
ようやく正体が判明する

聞こえないはずの
彼女の笑い声が
本当に楽しそうに
原っぱを転がっていく
ぼくも声を出せればいいのに
って思ったのは
久しぶりだ

地面のなかから現れたドアは
土に半分埋まって
しっとりと濡れている
手をのばせば届く距離が
こんなに確かだなんて
知らなかった

彼女は知っていただろうか


                 連詩「メリーゴーラウンド」 7




[グループ]
戻る   Point(5)